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宇宙ロボットのディジタル制御に関する研究
宇宙は人間にとって極限環境です.そこで人間に代わり 活躍する,マニピュレータを持つロボットが期待されています.
宇宙空間では,ロボット本体を固定するものがないため, マニピュレータを動かすとその反力によりロボット本体も動きます. そこで,ロケットエンジンを用いてロボット本体を制御しつつマニピュレータを制御する 方法が考えられますが,ロボットに搭載する燃料には限りがあります. そのため,マニピュレータの作業中にはロボット本体の制御を行わない方法が 提案されており,そのようなロボットはFFR(Free Flying Robot)と呼ばれています.
本研究室では,FFRのディジタル制御法, 特にマニピュレータ制御で問題となる特異姿勢を考慮した制御法の開発を行っています. また,一台の宇宙ロボットに対する制御法をそのまま適用可能な,複数台宇宙ロボットの協調制御法を提案し,コンピュータシミュレーションと,2次元平面内で宇宙空間を模擬いたシミュレータを用いた実験により,その有効性を検証しています.
転置一般化ヤコビ行列を用いた宇宙ロボットのディジタル制御
転置一般化ヤコビ行列を用いた複数台宇宙ロボットのディジタル協調制御

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転置一般化ヤコビ行列を用いた宇宙ロボットのディジタル制御

FFRの制御法として分解速度制御法がありますが,この方法は,マニピュレータ手先とマニピュレータ関節角速度とを関係付ける一般化ヤコビ行列の逆行列を用います. マニピュレータが伸びきった状態等の特異姿勢(Singular configuration)になった場合は,この一般化ヤコビ行列の逆行列が存在しないため,マニピュレータの制御ができません.また,特異姿勢に近くなるとマニピュレータへの制御入力が非常に大きくなります.
そこで,一般化ヤコビ行列の転置行列を用いた3通りのディジタル制御法を提案しています.マニピュレータ関節への制御入力が,トルク型の場合,速度型の場合,さらに,トルク・速度のいずれにも適用可能な統合入力型です.いずれの制御法も同等の制御性能を持ちます.
6リンク宇宙ロボットのシミュレーション例 3リンク宇宙ロボットの実験例

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転置一般化ヤコビ行列を用いた複数台宇宙ロボットのディジタル協調制御

1台の宇宙ロボットが物体を把持して作業する場合,ロボットと把持物体をあわせた質量中心は変化しません.そのため, ロボットが把持物体に対して大きな質量を有していなければ,把持物体を移動させればロボット本体も移動しますので,ロボットは十分な作業ができません.
そこで,複数台宇宙ロボットが協調して作業するシステムを提案しています. 一般に協調作業を行うためには,個々のロボットはその他のロボットの情報を必要としますが, 提案している協調作業システムは,基本的に操作すべき把持物体の位置・姿勢等の情報で作業ができます.また,協調作業するロボットの台数が変化しても 個々のロボットに対して構成されている制御法をそのまま使用できます. さらに,協調作業中に一部のロボットが故障しても,他のロボットにより作業を続けることができます.
個々のロボットに対して転置一般化ヤコビ行列を用いたディジタル制御法を適用し, 提案している協調作業システムによる把持物体操作シミュレーション例を以下に示します. なお,3台の宇宙ロボットのシミュレーション例は,Robot 3が作業中に故障して動かなくなった場合を示しています.この場合でも他のロボットにより把持物体を操作できています.
2台の宇宙ロボットのシミュレーション例 3台の宇宙ロボットのシミュレーション例

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